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株式会社公共設計創業50年の実績 医療・福祉・教育・文化・商業施設の建築設計(浜松)

NEWS

2026年04月23日

なぜ、この建築は“いかがわしい”と言われたのか

ー浜松・ハートランド設計の記憶

建物は、
時間とともに使われ方が変わり、街の中で役割を更新していきます。

人の流れが変わり、使われ方が変わり、
街との関係も、少しずつ書き換えられていく。

平成9年、浜松市田町に誕生した商業施設「ハートランド」。

この建築には、にぎわいと、少しの混沌、そして人の気配を受け止めるための意図的な“余白”がありました。

医療・福祉・公共建築を多く手がけてきた当社にとって、 商業施設への取り組みは、決して多いものではありません。
だからこそ、この建築には、街と人の気配をどう受け止めるかという問いが、 強く込められていました。




浜松・ハートランドという商業施設

ハートランドは、単なる飲食施設ではありませんでした。

宴会のにぎわい。
ライブの高揚。
静かにグラスを傾ける時間。

異なる目的が、ひとつの建物の中で自然に共存する。
そのために、空間はあえて均質に整えすぎず、
“選べる居場所”を積み重ねる構成としました。

1階のバーは、街の喧騒から少し距離を置いた「隠れ家」。
上階は、にぎわいを受け止める開かれた空間。

このコントラストが、
訪れる人の感情にそっと寄り添う設計の軸でした。







「いかがわしさ」と呼ばれた空気の正体

竣工当時、浜松市の都市景観賞にノミネートされたことがあります。

しかし、結果は落選。
理由は、ある審査員の一言でした。

  「あれだけは、いや。
      何か、いかがわしい感じがする」

この話を聞いたとき、事務所では笑いが起きました。
けれど同時に、どこか誇らしい気持ちもあったのです。

なぜなら、その“違和感”こそが、
この建築に意図的に残した余白だったからです。
その余白に、人は自分の時間を重ねていきます。

整いすぎた空間は、美しいけれど、長くは記憶に残りません。
少しだけ揺らぎのある場所に、人は惹かれます。



街の魅力は「整わなさ」に宿る

作家・宮部みゆきは、
生まれ育った深川の街について、こんな言葉を残しています。

「町が創造的なエネルギーを持つためには、
 ある種のいかがわしさを内包しなければならない」

街には、計画された魅力と、そうでない魅力があります。

人の欲望や偶然性。
予定調和ではない出会い。
少しだけ踏み込んでみたくなる空気。

そうした要素が重なり合うことで、
街は“目的地”から“体験”へと変わっていきます。

ハートランドは、その入口をつくる建築でした。



時間を経て、再び動き出す建築

「残すべきもの」と「変えるべきもの」

現在、この建築は新たな手によって生まれ変わろうとしています。

正直に言えば、
その過程に関われなかったことへの思いは、少し残ります。

けれど、それ以上に感じているのは、
この場所がどのように読み解かれ、
どんな未来へつながっていくのかという期待です。

建築は、完成した瞬間のものではなく、
時間の中で、解釈を重ねながら育っていく存在です。

だからこそ、今回のリノベーションもまた、
この場所に新しい記憶と、これからの時間を生み出していくのだと思います。

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