2015年10月05日
second stage_7 さようなら、旧手術室
ー35年支え続けた医療の現場に感謝を込めて
建物には、静かに時間が積み重なっていきます。
日々の診療の中で交わされた言葉や、
緊張感のある手術の一瞬一瞬。
そして、そこで働く人たちの想い。
今回、解体を迎える旧手術室には、
35年という長い時間が刻まれていました。
その空間に、設計者として、
あらためて向き合いました。

35年前に設計した手術室
聖隷浜松病院A棟2階にあった旧手術室は、
1980年、私たちが設計・監理を行った建物の一部です。
当時としては先進的な医療空間であり、
長年にわたり、多くの手術を支えてきました。
その場所がいま、
新たな役割へと静かに引き継がれようとしています。
日本で2番目のクリーンサプライホール
この手術部には、
日本で2番目に整備されたクリーンサプライホールがありました。
当時、柳澤忠教授のご指導のもと、
計画されたものです。
時代の最先端の考え方を取り入れながら、
医療の安全性を高めるために丁寧に設計された空間でした。
その背景には、
「より良い医療を支えたい」という、まっすぐな想いがあったのだと思います。
壁に残された、ひとつの言葉
現場を確認していたとき、
壁に残されたメッセージに目がとまりました。
そこに記されていたのは、
医師からの、ささやかな感謝の言葉でした。
この場所で過ごした時間。
ここで積み重ねられてきた医療。
そのすべてが、
その一言にそっと込められているように感じられました。
建物の価値は「使われた時間」にある
建築は、完成した瞬間に終わるものではありません。
むしろそこから始まる日々の中で、
少しずつ、その価値が育まれていきます。
35年という時間、使い続けられてきたという事実は、
この手術室が確かに役割を果たしてきた証です。
そして今、その役目を終え、
次の世代へと静かに受け継がれていきます。
解体は、終わりではなく「更新」
解体という言葉には、
どこか終わりの印象がつきまといます。
けれど医療施設においては、
それは新しい機能への「更新」でもあります。
時代に合わせて、より安全に。
より使いやすく、より確実に。
医療を支える環境もまた、
変わり続けていく必要があります。

今回の旧手術室の解体は、
単なる工事の一工程ではありませんでした。
自分たちが設計した建物が、
長い年月の中で使われ、
感謝の言葉として残されていること。
それは、設計者としての責任であり、
同時に大きな支えでもあります。
そしてその想いは、
これからつくる建築へと、静かにつながっていきます。