2011年10月06日
2st 見えない工事にこそ、品質が出る
ー聖隷浜松病院 山留め工事の設計思想
建物は、完成した姿だけでは語れません。
むしろ、その品質を左右するのは、
完成後には見えなくなる「基礎」と「地下」の工事です。
今回ご紹介するのは、聖隷浜松病院の山留め工事。
地中で進むこの工程には、
安全性・コスト・工期を左右する重要な判断が詰まっています。
少し専門的な内容になりますが、
できるだけわかりやすくお伝えします。
現在進行中の聖隷浜松病院第4期増築工事の山留め工事の写真です。
山留め工事とは何か
現在進行中の第4期増築工事では、
地下構造を支えるための「山留め工事」が進められています。
山留めとは、掘削した地盤が崩れないよう、
周囲をしっかりと支えるための工事です。
目に触れることは少ない工程ですが、
この精度と安全性が、その後の建物全体の品質を大きく左右します。
安心して使い続けていただくために、
見えない部分こそ、丁寧に積み重ねていくことが大切だと考えています。
連続地中壁(MSW工法)の採用理由
今回の現場では、
連続地中壁(MSW工法)を採用しています。
これは、地中に連続した壁を構築し、
土圧や地下水から建物を守る、信頼性の高い工法です。
・周辺地盤への影響をできるだけ抑えること
・高い止水性を確保できること
・都市部や稼働中の病院との相性が良いこと
こうした特長から、
医療が続く環境の中でも安心して進められる方法として選定しています。
目の前の工事だけでなく、
周囲の環境や日常への影響にも心を配ることを大切にしています。
TSP合成壁という合理化の工夫
一般的な山留め工事では、
土留め壁とは別に擁壁を新たに施工します。
しかし今回の計画では、
TSP合成壁という工法を採用しています。
これは、山留めとして設置した鉄骨部材を、
そのまま建物の擁壁として活かす方法です。
つまり、
・仮設と本設を一体化すること
・工事工程を無理なく整理すること
・コストの無駄を抑えること
を同時に実現しています。
ただ「つくる」のではなく、
より良いかたちを選び取っていく。
その積み重ねが、建物全体の質を高めていきます。
山留めや地下構造は、完成後にはほとんど見えなくなります。
けれども、だからこそ重要な部分です。
・安全性は十分に確保されているか
・将来の維持管理に無理はないか
・コストは適正に整えられているか
こうした大切な判断は、
実は設計の初期段階で大きく決まっていきます。
目に見えないところに、どこまで心を配れるか。
その姿勢が、建物の信頼性を静かに支えていきます。
公正な入札と技術提案の重要性
今回の工事では、
山留めと擁壁を一体化するという特性から、
各社の技術や工法の違いが大きく関わっていました。
そのため、入札においては
・各社から丁寧に技術提案を受けること
・その内容に基づいた適正な金額提示を行うこと
・技術とコストの両面から慎重に検討すること
こうしたプロセスを経て、施工業者を決定しています。
価格だけで判断するのではなく、
本当に安心して任せられる技術かどうかを見極めること。
それもまた、設計者としての大切な役割だと考えています。
建物の価値は、見た目の美しさだけでは決まりません。
むしろ、完成後には見えなくなる部分にこそ、
設計者の考え方や姿勢が表れます。
今回の山留め工事も、
安全性・合理性・そして将来への配慮を重ねながら進めてきました。
私たちは、こうした見えない部分にも責任を持ち、
長く安心して使っていただける建築を目指しています。
もし、地下工事や既存施設との取り合いに不安をお持ちでしたら、
どうぞ一度、気軽にご相談ください。
状況を丁寧に伺いながら、
無理のない進め方をご一緒に考えてまいります。